かながわブラインドスキークラブ
ブラインドスキーマニュアル
ブラインドスキーヤー(以下BS)がどの程度自分でスキーの着脱や点検装備を行うかは、スキーの経験や障害の程度により様々です。ぶっつけ本番が苦手で、初めての事は晴眼者以上に慣れるのに時間が掛かります。適切な援助で他の人に迷惑にならないように配慮して下さい。そして、時間が空いた時には苦手な事の練習に協力をして下さい。
○ | BSが慣れるまでパートナーが必要な援助をする項目 |
● | パートナーの役割 |
◇ | 助言 |
宿舎での準備と点検
○その日の天候に合わせた服装を身支度する為に天候状況(陽射し、風の強さ)などを提供する。
○視覚障害者と明示したゼッケンを着用する。
○服装(特にベルト類のはずれ、たるみ)の確認をする。
◇自分で荷物の置場所を確認していますので、手の出しすぎはかえって混乱を招く。
◇助言等をしながらの身支度や、早めに行動を起こすことで、慌てないようにする。
用具の準備と点検
○靴のバックル、板のエッジやセイフティ金具、ストックの手革、リング等の点検。 特に、貸しスキーの場合は、靴とセイフティ金具の密着度や開放強度などの点検・確認をする。
○トランシーバーを使用する場合はマイクや電池の点検をする。
◇乾燥室からの用具の出し入れは、安全に支障が無ければ一緒に行い各自で保管場所を確認しておく。
ゲレンデへの往復 ~ 3種類の誘導方法
その1
スキーをスキーバンドで止めて各自肩に担ぎ、パートナーが2人分のストックをまとめて持ち、その腕で誘導する。
その2
スキーとストックをバンドで固定し、各自が誘導に使う腕の反対の肩に担ぎ誘導する。
その3
スキーとストックをバンドで固定し、パートナーが前、BSが後ろに縦に並び、両手にスキーの片端づつ持って誘導する。
◇安全と思われる側にBSを歩かせる。(車道、溝等)
準備運動
○リーダーの動作(手足や身体の動き)表現が理解しにくい場合は、手を貸す。
ゲレンデ・オリエンテーション
●ブラインドのストックを使って、コースの方向などを説明する
●ゲレンデの概略について説明する。 現在地と全体の配置、ゲレンデの長さ、幅、斜度、リフトとゲレンデの関係、日の射す方向、風の向き、スピーカーの位置等。
ゲレンデコンデション(雪の量・質、プッシュ状況等)
人の混み具合(量・子どもの量、講習会、滑っているいる人達のレベル等)
スキー板の脱着
●滑走面や靴底に雪が着いていない事を確認し、スキーがひとりでに流れ出さないように注意する。
●BSがスキーの脱着をする時は、BSの谷側に位置してスキーの角度(最大傾斜線に対して、 ほぼ直角でスキーが自然に動き出さない角度)に注意しスキーの脱着時の指示をする。
○自分で確認します。状況により協力する。
さあ一緒に滑ろう
●パートナーの着く位置は、原則として斜め後方1.5mでBS全体と周囲が十分に見渡せる位置を滑る。但し、弱視者の場合、人によっては直前を滑る事もある。
滑り出し
●現在地の説明(谷側、山側、リフトとゲレンデ、コースの幅・斜度、人の混み具合等)
●滑走方向にある危険物(鉄塔、建物、川、がけ等)やスキーヤーの混み具合等をを説明し、 安全を見計らってスタートする。
◇滑走中の注意点など再度確認してから出発することも必要。
滑走中の声掛け
●指示に用いる言葉は右、左、ストップ、転べ等、簡潔な言葉とし、なるべく早めに大きな声で指示する。
●指示に用いる『右・左』の言葉は、必ず回転する方向を示す言葉として使い、 『右・左』を加重する足や押し出す踵を示す言葉としては使わない。
●同じ方向に再度進行する時は『もう一度右・左』と指示する。
●『止まれ』の指示は、早めに出し、出来るだけ方向を左右に回転し最大傾斜線に対して 90°以上の角度を持って前方へ滑り出さない位置で止まらせる。
●『転べ』の指示は、緊急の危険防止の時使用する。(余裕が有るなら周囲の危険度とBSの重心を考えて左右の指示を入れる)
◇同じ言葉でも、表現の方法(強・弱、速く、ゆっくり等)により状況の変化を知らせる事も出来る。
●滑走中はBSが不安にならないように絶えず声掛けして、2秒以上の沈黙は作らない。
◇滑走中は、リズムを持って表現すると、ターンのタイミングがつかみやすい。(ハぁイ 右・左、伸びて 左・右 等)
◇BSはゲレンデのどの位置を滑っているのかを知ると安心します。位置やフォールラインに関する情報を盛り込む。
◇声掛けの方法や『ハぁイ伸び上がって』『スキーのトップを落として』『廻しすぎない』『それ以上廻さない』 『そのまま斜め前横滑り』など「より高度な指示の言葉」はリフトに乗っている時BSとパートナーで 「指示の内容」と「言葉」を良く話し合って決めるておくのも良い。
ゲレンデ移動
●歩く時は斜面に対してトップやテールの位置が解りにくい為、具体的に指示を出す。(トップ・テールを何度左・右へ等)
●両スキーが平行を保ち、最大傾斜線対して直角になるようにすると、コントロールしやすい。
階段登行
●パートナーはBSの谷側に位置します。
●指示は進行方向、移動方向等を具体的に表現する。
*左・右の方へ何歩登る。
*少し前・後ろへ移動。
*トップ・テールを上・下 等。
リフトに乗る
●リフトの形(手摺の位置、座席と背もたれの大きさ、シングルかペアか、支柱の本数、座席と雪面の距離等)を説明する。
●リフトの回ってくる方向(右側・左側)を説明する。
リフトに並ぶ
●誘導の方法は終始後方から声で誘導するが、なるべく前の人との間隔を空けないように気を付ける。また、早めにストックの手革を外して、リフト乗車時に片手で持てるように準備する。
●混雑している場合は横に並び、ストックを外側の手でまとめて持ち肘を持った誘導の方が移動しやすい場合がある。
●指示は進行方向、移動方向等を具体的に表現する。
*『真っ直ぐ何m』
*『左・右に何歩、平行移動』
*『トップを左・右に何度』『トップを何時の方向』
*『そのまま、何m』
●ウェアのベルトのはずれやたるみ等、リフトに絡まるので注意する。
◇列のアウトコースに並ぶと混雑が避けられるし、早く乗れる。
改札
○各自で切ります。状況によって協力します。
●改札の方向、位置を指示する。
リフト乗車
ペアリフト
●パートナーはリフトに対して外側になるように乗車するのが原則ですが、 リフト乗り場で壁などの危険な所がある場合はそちら側に乗る。
●リフトの係員が手伝ってくれる場合は、パートナーは係員の反対側になるようにする。
●乗り場に近ずいて平らになったら、肘を持った誘導の方が有効です。
●リフトの終点が近ずいたらリフト降り場の一つ手前の支柱で降りる準備の指示をする。
●降り場に近ずいたら座る位置を浅めにして準備する。
●降りる位置に来たら、声を掛け、手をつないだまま、一緒に立ち上がる。
◇トリプルやクワッドリフトはペアと同じです。
◇リフト乗車時を利用して、指示の補足や情報交換をするのも良い。
シングルリフト
●リフト乗り場まで誘導してきたら、リフト監視員に視覚障害者であることを伝え、 リフト走行路に入らないように乗車位置の横まで誘導する。両スキーの先端が、リフト進行方向に平行になった事を確認後、 リフトの通過直後に乗車位置に平行移動させて、次のリフトの来る事を知らせる。
●リーダー又はサブリーダーがリフト降り場での誘導や介助の為に先に乗るので、 各ペアはリーダーから最低3個以上のリフト間隔を空けてBS、そのすぐ後にパートナーが乗る。 又、BSが初心者の場合は、ペアとペアの間隔もリフト2~3個空けることが望ましい。
●リフトに乗り終わったら、リフト上でも声が届く事を確認する為に早めにBSに声を掛けて、 リフト乗車上の安全に異常がないかを聞く。
●リフトの終点が近ずいたら早めに、現在位置を知らせ、リフトの降り場の一つ手前の支柱で降りる準備を指示する。
*終点まで何人目です。
*終点まで支柱何本です。
*板を平行にして、トップを上げて下さい。
●着いたら、降り場で待機しているリーダー又はサブリーダーの誘導を受けているBSと合流し、速やかに移動する。
●状況次第では、肘を持つ誘導法の方が移動いやすい場合がある。
リフト降り場からゲレンデへ
●サブリーダーの指示に従いましょう。
●降りたら速やかに移動し、次に降りる人の妨げにならないように配慮する。